■2005.8.22
「大野愛果超短篇物語〜真夏の午後の風景〜」
向日葵が我先にと太陽目指し咲き乱れ、風を誘うがごとく深く淡い緑がちりばめられた公園に、太郎と次郎はやってきた。
それぞれの懐で、母から貰ったであろう100円がジャラジャラと不規則なリズムを刻んでいる。無邪気にはしゃぎ回る少年達。忘れかけた何かを思い出すような、なんとも心温まる光景だ。
そしてそれは突然訪れる。
「ラッキー!60円見っけ!!」太郎が目を輝かせながら叫んだ。鉄棒の下でお金を拾ったのだ。まだ小さい少年にとって60円は大金である。
「太郎兄ちゃんすごいなー!いいないいなー!!」 尊敬にも似た純粋無垢な眼差しで太郎を仰ぎつつ、羨ましがる次郎。
さっそく公園の傍の駄菓子屋へ向かう少年達。
まず太郎が心踊らせながら160円分のお菓子を買った。続いて次郎が100円分のお菓子を・・・ここで悲劇が起こるのである。
「僕40円しかない!!」
・・・この後の二人の行く末を私は知る由もない。
それは、蒸せかえるような暑さの中、蝉の泣き声が容赦なくこだまする、そんな真夏の午後の出来事だった。
(注:この物語は仮名を用いたノンフィクションです)
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